磁化積分(B_INTEG)による空間磁場の計算精度
| | Jun 30, 2010 |
EMSolutionは要素内の磁化を体積積分することにより、任意の空間点の磁場を求める機能があります。しかし、その機能を用いて磁性体要素近くの磁場を求めようとすると、磁場の計算精度が低下するため注意が必要です。
ここでは一例として、一様に磁化した直方体による磁場の解析精度を検討します。なお、このモデルには解析解があり、真値との比較を行うことができます。
Fig.1のように0.2×0.2×0.2mの磁性体がz方向に一様に1Tで磁化されているとします。ただし対称性を考慮し、1/8領域の解析を行いました。磁化は一定で既知ですので、有限要素法による解析は不要であり、空間の磁場は磁性体の要素の磁化を積分するだけで求まります。電流および磁化からの磁場積分は下の式で行います。

Fig.1 解析モデル磁束密度分布
要素の積分はガウス積分による数値積分を行いますが、その積分次数によりその積分精度は変わってきます。Fig.2はz軸上磁性体直近における数値積分を行わない解析解(真値)に対する要素のガウス積分次数を変えた数値解の磁場の相対誤差を示します。縦軸はLog目盛であることにご注意ください。1%以下の精度を得るためには、z=0.101m(磁性体表面から要素サイズの1/10)では7次以上、z=0.102m(同1/5)では5次以上、z=0.105m(同1/2)では3次以上、z=0.11m(同1)では1次以上の積分が必要になります。要素内積分点数はガウス積分次数の3乗となり、計算時間は積分点数に比例します。

Fig.2 z軸上の磁場積分精度
Fig.3にz=0.101mにおける相対誤差の積分次数に対する依存性を示します。5次以上では、ほぼ次数乗に反比例して誤差が小さくなっています。2次で誤差が低い値となっていますが、評価点の位置に寄ると考えられ、2次の精度が高いとは言えません。Fig.2で相対誤差が10-6程度でそれ以下に下がらなくなっていますが、精度限界かと思われます。

Fig.3 z軸上z=0.101mの相対誤差のガウス積分点次数依存性
以上要素の磁化が正確に求められていると仮定した考察ですが、通常はまず有限要素法解析を行って磁性体の磁化を求めた後、空間磁場を計算します。従って、有限要素法解析自体の磁化の精度が関係します。
Fig.1の問題を有限要素法で解いた結果を以下に示します。境界条件による影響が小さくなるように、3次の無限要素を用いました。(ただし無限要素を用いますと、ICCG法の収束が極端に遅く、計算時間は大きくなります。)Fig.4に有限要素解析で得られた磁場の要素中心値、節点値の誤差を示します。横軸は立方体中心からz軸方向0.2mとしています。0.1m以下は磁性体内の磁場を表しています。今の場合、0.3%以下の誤差で空間磁場が計算されています。

Fig.4 有限要素解析での磁場解析精度
現実的には磁化積分の計算精度は、有限要素解析の誤差と磁化積分の誤差によって決まると考えられます。有限要素解析の精度は要素サイズを小さくすることにより、また磁化積分の精度は積分次数を高く取ることにより高めることができます。多くの場合、磁化積分誤差が加わらない、有限要素解析のみで求められる要素中心値や節点値やそれからの内挿値が精度は高いと考えられます。磁化積分で空間磁場を求める場合、特に磁性体が近傍にある評価点では、有限要素解析で求められる磁場と比較しその妥当性を評価しておくことが望まれます。ここでは、要素サイズが一定の立方体の場合に限りました。4面体などの他の要素や要素形状が歪んでいる場合には、ここで述べた傾向は変わらないと考えていますが、誤差が大きく出てくる場合もあるかと考えられ、注意が必要と思われます。
EMSolutionでは、有限要素法解析でのガウス積分点数を「6.ガウス積分点」(HandBook V-15ページ)で指定します。通常、この積分点数が磁化積分においても使用されます。ただし、「11.4. 磁化および電流積分による空間磁場」(HandBook V-25ページ)の入力でINTEG_OPT=1としますと、磁化積分においては積分点数を1とします。INTEG_OPT=1とした場合、計算精度は下がりますので、評価点が磁性体要素から遠く(少なくとも要素サイズ以上離れている場合)で、計算時間が過大になる場合に使用ください。また、ポスト処理のみを行う場合、「6.ガウス積分点」の指定は、ポスト処理のみに適用されますので、磁化積分の次数も変更することができます。